在来鶏(チャーン)等は、
沖縄戦によって壊滅的な被害を被りました。
“琉球犬”は、
激戦を免れた沖縄本島北部地域と八重山地域に
わずかに生存していた犬による繁殖で、種族の保存がなされてきました。
その確かな「記録」自体は存在しないのですが、
戦前から本島北部(やんばる)や八重山において
“琉球犬”をイノシシ狩りに利用して十分活用されており、
現在でも狩猟を目的とした愛犬家が増えているのが現状なのです。

“琉球犬”は、前回の記述のように
平成2年4月1日の「琉球犬保存会」の設立に伴ない命名された言い方で、
それ以前は
『トゥラー(虎)』、
『アカイン(赤犬)』
と呼ばれていました。
『トゥラー』は、その毛色模様に由来する沖縄方言で、
その色合いの違いによって
下記のように幾つかの細分された呼び名があります。
・ 黒トゥラー 黒地×茶のストライプ(虎毛)
・ 赤トゥラー 茶色×黒のストライプ(虎毛)
・ 白トゥラー 白地×黒のストライプ(虎毛)
・ アカイン 茶一色の赤犬
“琉球犬”の特徴
・ 性質がとてもおとなしく、犬のグループとしての狩猟に適しています。
・ ストップ(全頭骨の額段部)が浅い(短い)。
これは、縄文犬の大きな特徴です。
・ 耳がピーンと立ち、八の字状を呈し、
その左右の間隔が広く、胸の幅や胸の厚みが豊富で、前躯の発達が良い。
これは、もともと狩猟犬であるために、
獲物を捕獲するまでの持久力を必要とすることから生じた特徴です。
・ 尾は差尾が多く、全胸部の白い胸毛のスポットも共通しています。
・ 臭覚はイノシシ狩りに使われるほど極めて鋭く、
また敏捷性も優れ、勇敢でありながら、飼主に対してはとても従順です。
・ 生きた小動物には敏感に反応を示します。
“琉球犬”のルーツに関する研究をした
麻布大学の田名部雄一教授の遺伝学的調査結果によると、
前回のように
縄文人が日本に渡来してきた時に連れて来た犬(縄文犬)と
弥生時代に朝鮮半島から弥生人と一緒に入ってきた犬(弥生犬)との混血が、
現在の日本犬の基礎になっています。
これに対し、“琉球犬”は朝鮮半島からの遺伝子の流入が少なく、
北海道犬(アイヌ犬)や台湾在来犬(高砂族の犬)と遺伝子構成が近く、
南方アジア系の縄文時代の古い犬に属することが分かったのです。
このように、“琉球犬”は、
極めて古い時代の遺伝子形質を持った貴重な「生きた文化遺産」であり、
今後、より純粋の系統の“琉球犬”を増殖・普及させて
後世に残してゆく必要があるものと考えているのです。


