
“琉球犬”については、
・ 虎毛または赤の毛色を持つこと
・ ストップの浅いものが多いこと
・ 胴のびの良いこと
などの特色があります。
これらの特色は、保護・保全のために重要な指標であり、
みだりに外見の優美さの向上のために選抜すべきではないと思われます。
現在、本島北部の山原(やんばる)と
八重山(石垣島を中心とした八重山諸島)の二系統があり、
血液遺伝子からは両群に差は認められません。
しかし、可能であれば両系統は交雑せずに別系として保存すべきでしょう。
この際、留意すべきことは、近視交配を避けることです。
したがって、生まれた子犬の数が減るなど近交退化現象が出てくれば、
両系の交雑によって、これを避けることも必要となるかもしれません。
毛色については、虎のみでなく、赤も残すべきです。
虎同士の交配でも赤が出現しますし、
赤と虎を交配すれば虎と赤(虎のみの場合もあります)ができますし、
赤同士を交配すれば赤を生じます。
個体数があまり多くない現状では、
虎と赤の両系統に分けず、
相互に交配して維持するのが良いと考えられます。
平成5年度に作成した「“琉球犬”の保護に向けての課題」を
参考までに記述しておきます。
“琉球犬”の保護に向けての課題
1.他犬種との雑種を作ってはならない。
そのためには雌犬を飼育する会員は必ず犬舎を設置する。
2.種付けに際しては、保存会の計画交配のもとに実施し、
雌犬の主、雄犬の主、第三者の会員の立会いに交配を行うこと。
3.種付け報告、分娩報告をすみやかに必ず保存会事務局に連絡すること。
4.生産された仔犬は全て保存会の管理のもとで譲渡する。
個人での譲渡、売買は一切行わない。
5.遺伝学的には虎毛同士の交配で10種類の毛色が出現する。
優性遺伝で虎毛(黒トラ、赤トラ、白トラ)、
劣性遺伝で赤、その他の毛色が出るが、
保存会として認定する毛色は虎毛、赤とする。
その他の毛色については経過を観察する。
6.系統的には、山原(やんばる)系と八重山系の二系統があるが、
血液遺伝子からは両群に差はない。
しかし、体格において、八重山系が若干大きい。
保存会としても出来るだけ系統間繁殖を行い、
それぞれの特性を生かしてゆく。
7.底辺の拡大に伴ない、選抜沙汰を厳密に行い、
琉球犬として最もふさわしい遺伝形質を持った犬を
保存、増殖、普及してゆく。
8.今後の琉球犬の活用について、十分検討してゆく。
家庭犬、狩猟犬、その他。
9.みだりに改良や選抜を行わず、
琉球犬は貴重な遺伝遺産であり、生物資源でもある。
琉球犬は古代我々の祖先が神世の時代から残してくれた
沖縄の生きた文化遺産として、後世に残してゆく。


